2018.3.4 菅原卓郎×内澤崇仁

<Photos by AZUSA TAKADA>


【LIVE REPORT】

ロック・シーンで活躍するアーティストがたったひとりでステージに立ち、楽器と声のみで勝負するライブ・シリーズ「ぴあ presents STAND ALONE supported by uP!!!」。第7弾は、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)と内澤崇仁(androp)のツーマンとなった。本格的な弾き語りライブは初だという内澤が、心強い相手として指名したのが、公私ともに仲がいいという菅原だ。ちょっと意外な組み合わせのように思えたが、このステージではお互いに信頼し、アーティストとしてリスペクトし合っている様子を感じることができた。「STAND ALONE」の会場であるクラブeXは円形ステージで、なおかつ回転させることも可能ということで、これまでの出演者もこの装置を存分に使ったステージングで観客を沸かせてくれたが、ふたりも“回る”にちなんだ曲やサプライズを準備してきたりとノリノリで、普段のバンドでのライブでは見せないような姿も微笑ましかった。

 大きな歓声に迎えられてまずステージに登場したのは、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)。「androp、内澤くんのご指名でやってきました、菅原です」という挨拶から、1曲目は9mmの「黒い森の旅人」。じっくりと、曲のストーリーを語りかけるように歌う声は、ジェントルで魅力的だ。バンドではアクロバティックとも言える激しいアンサンブルで、轟音で体を震わせるが、その曲をギター1本で静かに深く深く響かせる。観客が瞬く間に、その歌に吸い込まれていくのがわかる。そして2曲目は、「今日は暖かくなりましたが、こんなポカポカ陽気にみなさんに聴いていただきたい曲」と、井上陽水のカバー曲「氷の世界」をヒリヒリとソリッドに聴かせた。事前のインタビューで、弾き語りの時はつい喋りすぎてしまうと言っていた菅原。このステージでも饒舌で、時折マイクなしの地声でも観客に語りかけたりと、とても和やかでリラックスした語り口が、会場の空気をほぐす。新ユニットのキツネツキの曲「ケダモノダモノ」を、ルーパーでリズムを作って披露し、また会場もノリノリになってきたから曲順を変えようと、観客のクラップを誘う「The Revolutionary」を演奏したり、フレキシブル。これまでにも弾き語りツアーを行なうなど、様々な場を経験してるだけあって、会場の空気作りのうまさは絶妙だ。そのほかにも、6月にリリースするソロのコンセプト・アルバム『今夜だけ俺を』から情念溢れる「悪女」を初披露し、続いて中島みゆきの「糸」を繊細に歌いあげた。ラストは「さて、回るか!」と一声あげて、「これから「Black Market Blues」をやるんだけど、この曲はみんなに手伝ってほしい」とコーラスをレクチャーする。ちなみに観客が歌うパートは、普段はギターの滝 善充がプレイする肝のリフ部分。恥ずかしがらずに!と声をあげ、回転するステージで大合唱を生み出すという、この日しか生まれないグルーヴで会場を一体化した。

 続いて、拍手が高鳴るなかステージに登場したのは、内澤崇仁(androp)。ギターを爪弾きながら自己紹介をすると、「Shout」へ。大切なものを扱うように、丁寧に繊細にメロディを描き、声を震わせる。徐々に熱を帯びその歌で会場を飲み込むと、次の「Joker」へと繋いでいく。冒頭からグッとエンジンがかかったエモーショナルな歌声を、観客は大きな歓声で迎え入れた。普段、バンドでのステージでは、あまり多くを語ることはない内澤。とくに今日は、ひとりでステージに立つということで不安もあると言っていたが、「卓郎くんが助けてくれると言っていたので、もう少し頑張ります」と笑顔を覗かせる。「STAND ALONE」の出演オファーがあったとき、ステージが回るということで、「僕が知るなかで、いちばん一緒に回ってくれそうな卓郎くんに声をかけました。今日は念願叶ってます」とツーマンの経緯を語って、観客を笑わせたりと、徐々に空気も和やかになる。その会場を、躍動感たっぷりに「Prism」で揺らす。

「今日は、何の曲で回ろうかと思っていたんですけど」と言って、ステージを回転させた曲は、映画『天空の城ラピュタ』主題歌である「君をのせて」。《地球はまわる 君をのせて》と歌われる、この曲を選んだ意図がわかると、会場から拍手喝采がわき起こる。過去の出演者もそうだが、このイベント、このステージにちなんだ曲を演奏してくれることも多く、それがとてもスペシャルだ。そして後半には、3月7日リリースのandropのニュー・アルバム『cocoon』から、「Hanabi」をいち早くアコースティック・バージョンで聴かせてくれた。曲の空気や湿度、情景が目の前に浮かび上がるような、リリカルで臨場感溢れる歌が美しい。また、春に向けて新しい何かに向かっていく人の支えになればと、「Traveler」を贈った。ラストを飾ったのは、「Tokei」。昨年行なったandropのライブ「one-man live 2017 at日比谷野外大音楽堂」で、内澤がセンターステージで弾き語りを披露したが、その姿を見て今回の「STAND ALONE」の出演オファーへと至った、大事な曲でもある。ゆったりとステージが回転するなか、時を慈しむようにギターを紡ぎ、歌うステージは格別だった。

 アンコールは「STAND ALONE」の楽しみのひとつとなっている、ふたりのセッションが行なわれた。それぞれのステージを終え、肩の荷がおりたこともあるのか、仲のいい普段のふたりの会話を聞いているようなゆるーいヴァイブスが、会場を明るくする。セッションに選んだ曲は、お互いの曲を1曲ずつ──「MirrorDance」(androp)、「Termination」(9mm Parabellum Bullet)と、hide with Spread Beaverカバーで「HURRY GO ROUND」の計3曲。おわかりかもしれないが、どれも“回る”にちなんだ曲でもある。どの曲も、ぴったりと息のあったハーモニーを響かせるデュエットとなっていた。バンドにおいては互いの曲をカバーすることは、なかなかないことだろうと思う。弾き語りは、そんなちょっとしたハードルを軽々と超えて、それぞれの曲のイメージが新たになるような展開も見せる。ふたりのヴォーカリストとしての“声”の力も、改めて強く印象付ける濃厚な一夜となった。

(取材・文:吉羽さおり)


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